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54. 次元の狭間

last update Last Updated: 2025-12-16 11:37:23

「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!」

 |幻精姫遊《フェアリーフレンズ》のリーダーが顔を真っ赤にして金髪を振り乱しながら駆けてくる。ゴールドのビキニアーマーがキラキラと輝いた。

「あんた達何なのよ? どういうこと?」

 この街で特別扱いされるとしたらアラフォーパーティなどではなく、自分たちだろうとでも思っているのだろう。

 相変わらず|傲慢《ごうまん》な彼女の若さを少し羨ましく思いながら、ソリスは答えた。

「あなた、殺された事……ある?」

「はぁ……? ある訳ないでしょ!」

「私は何度も殺されたの……。身体を破壊される激痛が脳髄をも破壊していくの……。それはもう二度と味わいたくない最悪な体験よ? でもおかげでこの世界の真実に目覚めたのよ」

 ソリスは青空に手を伸ばし、晴れやかな顔で伝えた。

「はぁっ!? 何が真実よ! ショボいおばさんのくせに!」

 ソリスの脳内でカチッという何かのスイッチが入った――――。

 直後、レベル135のソリスはひらりと風にように宙を舞い、大剣を朝日にギラリと光らせながらリーダーに迫る。

 ひぃっ!

 そのすさまじい殺気に気おされ、リーダーは剣を抜くこともできなかった。

 刀身を首に当てながら、ソリスは鋭い目を光らせ、リーダーの瞳をのぞきこむ。

「なんて……言ったの? もう一回言ってくれる?」

 ひっ! ひぃぃぃぃぃ! ごべんなさいぃぃぃ!!

 ソリスの瞳に浮かぶ殺意に、リーダーは言葉を失い、ジョロジョロと失禁してしまう。

「あちゃー……。そうだ、コイツはそうだったんだよ……」

 ソリスは慌てて飛沫を避けながら眉をひそめた。

 

     ◇

「一回殺してやれば良かったんだよ。きゃははは!」

 乗船してきたソリスに、シア

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